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The Dark Tower ダークタワー

アメリカ映画 (2017)

トム・テイラー(Tom Taylor)が真の意味での主役を演じるSFファンタジー・アクション大作。残念なことに、主役でありながら、共に戦うガンスリンガーを演じるイドリス・エルバ(Idris Elba)と、「敵役」のマシュー・マコノヒー(Matthew McConaughey)〔アカデミー主演男優賞〕ばかりに注目が集まっている〔日本の映画パンフレットも、アメリカのDVDの特典映像も〕。それは、この映画を観にくる観客層が、子役に目を留めるような人たちではないからであろう。しかし、会話の内容を見ていると、トム演じるジェイクは要の部分で重要な台詞を任されており、脚本の上では重視されていることが分かる。この映画は、スティーヴン・キングの長大な原作『暗黒の塔』シリーズの一部を切り取って作られたもので、最近に多いシリーズ化を狙ったものではない。原作で、スティーヴン・キングは、常識的なビッグバンによる宇宙とは全く違った不思議な平行世界を創出し、その点は評価できる。しかし、全世界で英語が話され、その原点にアーサー王伝説を持ってくるという設定には、アメリカ至上主義的な違和感を覚える。映画の製作費6000万ドルは、同年に公開された『マイティ・ソー バトルロイヤル』の1億8000万ドルと比較するとローバジェットと言えるかもしれない。しかし、似たような特撮のオンパレードで内容の希薄な映画に飽きてくると、こうした変わった趣向の「大作」の存在は貴重だ。この映画の制作規模や、描いている世界の独自性、特撮よりも演技を重視する姿勢は、『ハンガー・ゲーム』(2012)に似ているような気がする。因みに、『ハンガー・ゲーム』の予算は7800万ドル、SFX漬けにしなければ、こうした予算でユニークな大作は十分成立する。

高校1年になったばかりのジェイクは、1年前に父を亡くして以来、毎夜のように見る不思議な夢に悩まされてきた。夢で見る世界は、地球とは別の世界がメインで、そこには不気味は黒衣の男が登場する。夢には、彼が住んでいるニューヨークも出てきて、そこには、人間の皮膚を被った偽人間もいる。ジェイクは、自分が夢に見たものをスケッチブックに描き、それを自室の壁一面に貼っていた。当然、それは母から見れば困った行為で、ジェイクを嫌う義父〔殉職した消防士の夫の死後1年もせず再婚する母も非常識〕から見れば異常な行為だった。ジェイクは、心配した母により精神科医の元にカウセリングに行かされるが、義父はそれを無駄で馬鹿げた出費と捉えている。ある日、ジェイクが学校で起こした騒動をきっかけに、学校から「より科学的」な検査を受けることを進められ、無料なので義父は無理矢理ジェイクに承諾させる。しかし、その施設から迎えに来た2人は、ジェイクが夢に見た「偽人間」だった。そのことを両親に言っても相手にされず、ジェイクはやむなくバスルームの窓から逃亡する。映画は、そこからSFアクションへと変化していく。追跡をかわして逃げのびたジェイクは、夢に出てきた廃屋を訪ね、そこに潜む化け物に襲われるが、ジェイクが内に秘めた「シャイン」と呼ばれる力によって打ち勝つ。そして、その廃屋が異世界へのポータルだったことから、「中間世界」と呼ばれる場所に飛ばされる。そして、その世界で、夢に出てきた「ガンスリンガー」と呼ばれる拳銃の使い手と出会う。ローランドという名前のガンスリンガーは、ジェイクのスケッチブックの中の黒衣の男に強い興味を示し、男の背景に描かれた場所を突き止めるため、その世界にあるマニ教徒の村に行き、読心能力のある「読み手」にジェイクを調べさせようとする。異性物の襲撃に遭いつつ村に着いたローランドに、「読み手」は、ジェイクのシャインは前例がないほど強いと告げ、さらに、黒衣の男の居場所は分かるが、村にあるポータルではそこには行けないとも告げる。幸い、ジェイクの機転で、ニューヨーク経由で行けることが分かる。しかし、数日前、ジェイクが廃屋のポータルを無断使用したことで、ジェイクが強力なシャインの持ち主であることが黒衣の男に知られてしまう。黒衣の男が最終目的と考えるダークタワー(暗黒の塔)の破壊にとって、ジェイクは必要不可欠の存在となった。黒衣の男は、配下の怪物をジェイクの捕獲に送り込むが、ジェイクとローランドは際どい所でニューヨークに逃れる。しかし、2人が逃げた先がニューヨークだと知った黒衣の男は、ジェイクをローランドと引き離して捕獲することに成功する。ジェイクは黒衣の男の本拠地、「ダークタワーの破壊装置」のある場所に連れて行かれ、破壊の道具に使われそうになるが、旅の間にシャインの力をコントロールできるようになっていたジェイクは、ローランドと一緒になって破壊装置を壊し、ダークタワーを救おうとする。

トム・テイラーは、2001.7.16生まれ。この映画の撮影は2016.8なので、15歳になったばかりだ〔よく、16歳と書かれているのは間違い〕。かなり個性的な顔をした少年。イギリスのTVに端役で出ていただけの経歴で、大役に抜擢された。イギリスの子役らしく、演技の基本はきっちり出来ている。ハイティーンからの出発なので、これから伸びていくと期待したい。


あらすじ

あらすじでは、スティーヴン・キングの原作『暗黒の塔』シリーズや、映画のパンフレットのトリビア〔IMDbのトリビアと酷似〕とも関連付けながら、紹介していく。映画が始まってすぐ制作会社コロンビアのトレードマークが出るが、その後に出てくる「TET」という会社のロゴ(1枚目の写真)は、架空の社名。『暗黒の塔』シリーズでは、テット・コーポレーションは、世界征服を目論む悪の権化「深紅の王」に仕える複合大企業ソンブラ・コーポーレションに対抗するため、シリーズの主役ガンスリンガーのローランドらによって「現実世界」〔Keystone Earth。地球のこと〕に設立された企業のこと。下の写真の 「亀」は 暗黒の塔の12の守護動物の1つ、「赤いバラ」は暗黒の塔の象徴。因みに、映画での最大の悪役「黒衣の男」ことウォルターは、「深紅の王」の家臣の1人に過ぎない。映画の冒頭に出てくる子供たちは、特殊能力「シャイン」(原作では「タッチ」)を持っていて、暗黒の塔を破壊して世界を混乱に導く目的で地球から拉致されてきた犠牲者。その次に、その施設の全景が映る(2枚目の写真)。矢印は、中核施設の「ドーガン」。ソンブラ・コーポーレションが「中間世界」に建設した科学実験施設で、暗黒の塔の破壊を目的とし、他の世界に移送できるポータルの中継地でもある。「中間世界」はローランドがいる世界。3枚目の写真は、複数のシャインを持つ子供たちが機械につながれ、吸い取られたシャインが光の束となって暗黒の塔を直撃したところ。シャインの力が弱いので塔は破壊されないが、塔から出ている2×6本の「ビーム=スポークス」が打撃を受け、「ビーム震」が起きる。それは、「現実世界」である21世紀の地球にも大きな影響を与え、世界各地で地震が発生する(4枚目の写真)。ここまでが、いわば、イントロにあたる。原作を読んでいないと、これだけ観ただけでは、何が起きているのか理解困難だ。
  
  
  
  

イントロが終わると、いきなりジェイクの部屋。ジェイクは地震で目が覚める〔震度4程度〕。ドアが開き、心配した母が、「ジェイク」と声をかけ、無事を見て、「大きかったわね」「さあ、朝食よ」と言う。食事を終えると、ジェイクはキッチンのテーブルでスケッチブックに前夜の夢を描き始める。TVでは、マグニチュード5.7の地震がニューヨークを襲い、アメリカの東西両海岸でも群発地震が起きているとのニュースが流れている。義父は他のチャンネルに変えるが、そこでも、被災状況の映像と「多発する地震の原因は不明です」との言葉が流れている。この男は、数ある映画の中でも最低の義父の1人だが、「くそっ、ESPN〔スポーツ専門チャンネル〕でも、地震の話か」と文句を言う。その時、隣に住む友達のティミーが入って来て、「まだ生きてるか調べて来いと言われた」と声をかける。母は、「何ともないわ、ティミー」と返事する。ティミーは、ジェイクに「かなり激しかったな。大丈夫か?」と訊き、ジェイクは「うん」と答える(1枚目の写真)。ティミーが去ると、母は、「学校が終ったら、ホッチキス先生に寄るの忘れないで」と言い、ジェイクは自室に行く。義父は、「精神分析医なんか無駄金だぞ」と言い、母は「よくなってるわ」と庇う。ジェイクは1年ほど前に消防士の父が殉職してから、悪夢を見るようになり、母はPTSDではないかと心配し、医者に通わせている。ジェイクの部屋には、壁一面に不気味なスケッチが貼ってある(2枚目の写真)。その多くは男〔黒衣の男〕と塔〔暗黒の塔〕だ。もちろん、ジェイクにその意味は分からない。ジェイクは、放課後、夢をスケッチブックに描いていると、いかなり意地悪な同級生にスケッチブックを奪われ、「それで、世界の終わりはいつ来るんだ?」とからかわれる。「返せよ」。「どうした。薬、効いてないのか?」(3枚目の写真・左)。この学生は、同じスティーヴン・キング原作の最新作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』(2017)でも意地悪な学生(3枚目の写真・右)を演じていたニコラス・ハミルトン。ジェイクは、その言葉に頭にきて顔面に一発 お見舞いする。教師が止めに入るが、この事件は、さっそく両親に報告される。ジェイクは、約束通りホッチキス医師を訪れる。医師は、ジェイクの描いた塔の絵を見ながら、頻発する地震は塔が攻撃されているせいだというジェイクの主張を批判する(4枚目の写真)。「君には、夢と現実の区別ができていない」。「夢じゃない。いい? 頭が変なんじゃない。僕は、いつも同じ夢を見るんだ。塔、黒衣の男、偽の皮膚を被った奴らの」。「塔が破壊されるとどうなる?」。「暗黒と炎」。この2つの言葉から、医師は、ジェイクの父が死んだ「夜の火災」と結び付けようとする。なお、この医師の部屋に置いてある写真(5枚目の写真・左)は、スティーヴン・キング映画の代表作『シャイニング』(1980)の舞台となるオーバールック・ホテル(5枚目の写真・右)と同じ〔写真は、『シャイニング』の冒頭のシーンから〕
  
  
  
  
  
 
帰宅途中のジェイクは、信号待ちをしていて、ある男の動作に目を留める。その男は、皮膚が被せもののように顔を動かしている。すると、浮浪者のような男が、「気をつけろ。連れてかれるぞ」と声をかける。「奴らは、君の心のパワーを欲しがってる」。ジェイクは、家の前でティミーと会い、一緒に部屋に入って行く。そこでは、母と義父が口論の真っ最中。「あいつは不安定だ。申し出を受けよう。おまけにタダときてる」。「お金の問題じゃない」。「他にもう道はないんだ」。「少しは息子らしく扱えないの?」。そこにジェイクが姿を見せる。義父:「学校で何をやらかしたんだ?」。母:「トラブルは起こさないって約束したでしょ」(1枚目の写真)。「ごめん、ママ」。母は、「郊外の医療施設から学校に打診があったの。心の問題を抱えた生徒のための施設で、週末空いてるそうよ」と勧める。義父:「科学的だ。脳スキャンとか睡眠パターンとか」。ジェイクはOKして自分の部屋に行く。そして壁のスケッチを見ながら、「また薬を飲まされる。時間のムダだ」とティミーに言うが、彼からは、「絵ばっか見てるなよ。気持ち悪いぞ」と言われてしまう。2枚目の写真は、重要なスケッチ2枚。左は、「1919」という数字をいっぱい書いた紙〔「19」は、スティーヴン・キングの作品、及び、『暗黒の塔』シリーズで重要な数字(http://stephenking.wikia.com/wiki/19)(http://darktower.wikia.com/wiki/19)〕。右は、偽の皮膚の張り合わせ部分を描いたもの。原作では、「タヒーン」と呼ばれる獣人間や「ロウ・メン」と呼ばれるタヒーンと人間のハイブリッドが、人間社会にまぎれ込んで各種の任務を果たすため偽の皮膚を仮面として被っている。ジェイクは、1人になると、壁のスケッチをすべて外して引き出しにしまう(3枚目の写真)。
  
  
  
 
その夜、ジェイクは、これ以上困らないよう、「もう夢は見たくない。一晩だけでも」と言い聞かせて眠る。しかし、また、重要な夢を見てしまう。登場したのは2人の人物。若い方が、「もうだめだ」と言い、老いた方が、「弱音を吐くな。まだ塔はあるし、お前もいる」と勇気付ける。その時、口笛の音が聞こえる。2人は瞬時に立ち上がり、2挺ずつ拳銃を構える。空間から、「ガンスリンガーども」という声が響く。2人は、ガンスリンガーの信条を唱える。「我は手で狙い定めぬ。手で狙う者、父親の顔を忘却せり。我は目で狙い定める」。「ガンスリンガーども、こっちだ」。「我は手で撃たぬ」(1枚目の写真)「手で撃つ者、父親の顔を忘却せり。我は気で撃つ」。「ガンスリンガーども」。「我は銃で殺さぬ。銃で殺す者、父親の顔を忘却せり。我は心で殺す」。その時、霧の中から1人の男が姿を現し〔この男が 「黒衣の男」〕、「呼吸を止めろ」と言う。その途端に老いたガンスリンガーがくずおれる。若いガンスリンガーは、「呼吸して! 打ち勝つんだ!」と声をかけるが、老人はあえなく死亡する〔2人は親子〕。男は、「ローランド、お前には一度も効かん。俺の魔力に抵抗力があるな」と言うと、「また会おう」と背を向ける。ローランドは、銃を向け、「戦え!」と叫ぶ。相手が無視して去って行くので、銃を撃つ。しかし、男は、簡単に弾を手で受け止め、その弾を見ながら、「ローランド、塔は破壊する」(2枚目の写真、黄色の矢印は弾、赤い矢印はローランド)「この次にな」、と言って去る。このシーンの後、画面は一旦暗転し、女性の言葉だけが聞こえる。「黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り、その後をガンスリンガーが追っていた」。これは、『暗黒の塔』シリーズの冒頭にある有名な一文だ。ジェイクが最後に見たイメージは、放置された庭の中に建つ1軒の館。そして、目が覚める。ノックの音がして、朝早く出かけるティミーが顔を覗かせる。ジェイクは、ガンスリンガーと館の絵を見せる(3枚目の写真)。ティミーが出かけた後、ジェイクはパソコンを立ち上げ、「Help Me Find it」のサイトに館の絵を載せ、「これ、ニューヨークのどこにあるか、知りませんか?」と訊く。
  
  
  

その時、義父がドアを開ける〔ノックなし〕。「施設の人が来たぞ」。「今? 今はムリだ」。「お前のためじゃなく、ママのためだと思え」。ジェイクが出て行くと、中年女性がにこやかなに出迎え、受け入れ管理責任者だと自己紹介する。男性の運転手も同伴している。ジェイクは、「おたくじゃ、正確に何するの?」と尋ねる。女性が話している間、ジェイクが女性の手を見ると(1枚目の写真)、妙な動きをしている。そこで、運転手の顔を見ると、夢で見たのと同じ「偽の皮膚の継ぎ目」が耳の下に見える。ジェイクは、2人が人間ではないと確信した。そこで、「ママ、荷造りを手伝って」と頼み、一緒に自室に行く。ジェイクは、「ママ、奴らだ」「夢に出てきた偽の皮膚の人間だ」と必死で訴える。しかし、そんな話を母が信じるはずがない。「もう、やめなさい」。「お願いだから、聞いてよ」。そこに、義父が勝手に入ってくる。「どうなってる?」。ジェイクは急いでドアを閉める。「あいつら人間じゃない。ホントの顔じゃないんだ」。「やめんか!」。「黙れ ロン〔義父〕! キチガイだといいと思ってるんだろ。僕を追い出せるからな」。今度は、母に、「頼むから信じてよ」とすがるように言う(2枚目の写真。ロンのあくびをしているような顔が憎たらしい)。ロンは、「明らかに悪化してるな。お前が今すぐ行かないなら、俺が力づくで階段を引きずり下ろしてやる」と言って部屋を出て行く。この男にとって、ジェイクは邪魔者以外の何者でもないことが良く分かる。母は、ジェイクの首を持つと、「週末1回だけよ。もし、我慢できなければ迎えに行くわ。約束する」と言う。その時、パソコンから着信音が聞こえ、館の場所が「Dutch Hill, Brooklyn」だと分かる。それを見たジェイクは、「分かった、行くよ」と嘘をつく(3枚目の写真)。
  
  
  

母が出て行くと、ジェイクは書き溜めたスケッチをまとめてスケッチブックに挟むと、黒いバッグに入れて左肩に下げ、もう1つのバッグを右手に持って部屋から出てくる。そして、「歯を磨いてくる」と言って、右手のバッグを床に置くと、バスルームに入ってロックする。女性の偽人間は、すたすたとドアの前に行くと、「逃げるつもりよ」と言い、ドアをノックする。返事がない。義父がドアを押し開けると、中は空っぽで窓が開いている。男の偽人間が すかさず後を追う(1枚目の写真。屋上へと逃げるジェイク)。ジェイクは屋上を3つ走り抜け、非常階段に飛び降り、さらにそこから庇に飛び(2枚目の写真、矢印は追っ手の足)、さらに、電話ボックスの屋根に飛び、最後に歩道に着地する。顔がはっきり見えているので、本人のスタントなのだろう。DVDのメイキングは、イドリス・エルバとマシュー・マコノヒーに割かれていて、ジェイクのシーンについては何も分からない。ジェイクは、メトロの出入口から入って、道路の反対側の出入口から出るという単純な策略で追っ手をまく。そして、自分で描いたスケッチを見ながら「Dutch Hill, Brooklyn」を目指す〔ニューヨークにDutch Hill(標高518m)はあるが、ブルックリンではない〕。そして、遂に見つけ出す(3枚目の写真)。
  
  
  

館の入口のドアには、「猛犬注意。立入禁止」と張り紙がしてある。鍵がかかっているので、板張りしてある窓を壊して中に入る。壁には大きく、「ALL HAIL THE CRIMSON KING(深紅の王を讃えよ)」と書かれている(1枚目の写真・左、原作の「深紅の王」の名前が出てくる貴重な場面〔ニューヨークの「基地」の入口にも書いてある〕)。隣の部屋に入ると、接近者を感知して機械が動き始め、電子音声が、「ようこそ。行き先を入力して下さい」と告げる。ジェイクは入力装置をじっと見て(2枚目の写真)、何度も夢に出てきた数値「19-19」を入力する。すると、「1-9-1-9。中間世界」と音声がし、画面の表示も「中間世界: 南/南東 ポータル」に変わる(1枚目の写真・右)。同時に、左奥の金属壁が輝き、中央に光の通路が出現する。異次元の世界と結ぶポータルだ。「中間世界。一方通行です」と音声がし、準備が整ったと告げる。光を通して砂漠のようなものが見える。ジェイクは右足のスニーカーを脱ぎ、試しに投げ込むと、すっと消える。スケッチブックの入ったバッグを抱えて中に入ろうとすると、床の木の板がバラバラに裂け、怪物のようにジェイクをつかみ(3枚目の写真)、捕捉、もしくは、抹殺しようとする〔後で、館悪魔だと分かる〕。しかし、ジェイクが「離せ!」「止めろ!」と渾身の力で叫ぶと、死んだようになって解体する。ジェイクは急いで光の中に逃げ込む(4枚目の写真)。
  
  
  
  
  
ジェイクが飛ばされた先は、風の強い不毛の砂礫地。数秒もしないうちに、光の門が閉じる(1枚目の写真)。これで、元の世界に戻るすべはなくなった。ジェイクには、ここが地球上かどうか分からなかったが、空を見た時、大きな月と小さな月の二重衛星を見た時(2枚目の写真)、「中間世界」の意味を認識する。ジェイクは、近くに落ちていたスニーカーを履くと、方向が分からないまま歩き始める。途中で、砂の竜巻にも遭遇する。その頃、「ドーガン」のポータルでは、「黒衣の男」が戻って来て、部下から、ポータルの不正使用があったと報告される。「地球の古いポータルの1つです」〔字幕では、“Keystone Earth” という用語が使われ、原作では、それを「根本原理世界」と訳している。しかし、『暗黒の塔』シリーズのサイトによれば、「根本原理世界」=「スティーヴン・キングのいる場所」=「現実世界」なので、ここでは簡単に「地球」とした(http://stephenking.wikia.com/wiki/Keystone_Earth)〕。こんなことは絶えて起きたことがないので、「黒衣の男」は自ら調査に向かう。一方のジェイク。一夜を砂漠で過ごし、空が明るくなり始めた頃、行く手に遠く見える崖の上で小さな火のようなものが見える。誰かが焚き火をしている! ジェイクは真っ直ぐそちらに向かう。真昼間になってようやく崖を這い登ったジェイクは、焚き火の跡に到着。まだ煙が少し残っている。そして、水筒を発見。喉がカラカラのジェイクは飛びついてガブ飲みする(3枚目の写真)。
  
  
  

ジェイクが飲み終えた頃、後ろで人の気配がする。慌てて振り向いたジェイクには、巨大な拳銃が向けられていた。男が訊く。「誰だ?」。ジェイクは、「この人だ」、と言った後、すぐに、「僕、ジェイクです。ジェイク・チェンバーズ。夢で見ました」と言い、それでも、拳銃を下げてくれないので、自分が描いたガンスリンガーの絵を見せる。「あなた、ガンスリンガーでしょ?」(1枚目の写真)。男は、ようやく拳銃を下げると、「ガンスリンガーはもういない。一人もだ」。「でも、見たんだ」。「夢にあざむかれたんだ。聞きたいことが聞こえただけだ」。「会うために、こんな遠くまできたのに。他の世界からだよ!」。「楽しく帰れよ」。戻る途を知らないジェイクは必死に追いすがる。「ねえ、待ってよ」。そして、気を惹こうと、「黒衣の男と戦ってたでしょ…」と言い始める。すると、いきなり胸ぐらをつかまれ、絶壁から落とされそうになる。「黒衣の男だと? 知ってるのか? 奴に送り込まれたな。お前は罠だ。奴はどこだ? どこに隠れてる?!」。ジェイクは、「知らない! 誓うよ!」(2枚目の写真)「夢の中で見ただけだ。あなたを見たように! 名前、ローランドなんでしょ? やめてよ」。ジェイクはようやく解放される。そして、自分が描いた「黒衣の男」の絵を見せる。「これ、いつ描いたんだ?」。「1年前。誰なの?」。「妖術使だ。お前が見た時、ウォルターはいつもこの場所にいたのか?」(3枚目の写真)。「うん」「彼の名前、ウォルターなの?」。ローランドは何も言わずに絵を自分の服の中に入れる。ジェイクは、仕方なく、「持ってていいよ」と言う。崖っぷちに立って、遠くを見ていたローランドは、「必ず見つけてやる」と誓うようにつぶやくと、「森の向こうに部族がいる。俺たちはそこに向かう。お前の見たものの分かる『読み手』がいるからな」とジェイクに説明し、すぐに出発する。
  
  
  

ニューヨークに着いたウォルターは、まず、ジェイクが訪れた館を調べる(1枚目の写真)。そして、床に落ちていた小さな木片を拾う〔ジェイクの血が付いていた〕。そして、市内にある「深紅の王」の拠点を訪れる。多くの偽人間が、高官の到来を物珍しげに見守る。代表者のセイヤーが、「ウォルター・パディック様、ご到来とは、どうなさいました〔To what do we owe this great honour〕?」と訊く。「この街で、誰かがこっそりポータルを使った。館悪魔を殺してな」。「お許し下さい。誰がどこに行ったか突き止めます」。「もうやった。よき犬になれ」。セイヤーは、ウォルターが差し出した木片を嗅ぐ。「人間の血です。少年。きれいなシャインの持ち主です」。「だから、通過できたんだな。館悪魔は恐るべき存在で、真に力のあるサイキックだけが打ち破れる」。「シャインの少年が、館悪魔より強いとおっしゃるのですか?」。「大当たり〔Jackpot〕」。その時、1人の「女」が、「昨日、仲間の2人が子供に手こずりませんでした?」とセイヤーに声をかける〔ウォルターに直接 声をかけるのは畏れ多い〕。一方、ローランドとジェイクは暗くなり始めた森の中にいた。霧も出ている。森の中というのに。遊園地にあるような回転式のブランコの残骸が残っている。そして、遊園地の正面の電飾看板らしきものの前に出る(2枚目の写真)。写真・左の矢印は、看板を指していて、そこには、「PENNYWISE」という文字が並んでいる。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』(2017)の影の主役である悪のピエロ、ペニーワイズのことだ。それに、右の矢印は、これも『IT』のシンボル的存在の風船。場面はもう一度ニューヨークへ。ファーストフード店で、ジェイクのアパートを訪れた2人がウォルターと一緒の席に座っている。高官に会い、恐縮する2人に、ウォルターは、「ガキを見失ったと聞いた」と告げる。「私どもの責任ではありません。あの子は、私たちの存在に気付いておりました。全力を尽くしたのですが…」。ウォルターには弁解を聞く気はない。「名前と場所だ」。「ここに全部あります」。「ジェイク・チェンバーズ」。それだけ言うと、「では、互いに殺し合え」と命じる。すごい非情さだ。ウォルターが席を立つと、2人は争い始める(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  
 
場面は「中間世界」へ。夜、焚き火の横で、ジェイクが地面に「暗黒の塔」の模型を作っている(1枚目の写真)。「巧く描けてるな」。「僕、これが何だか、知らないんだ」。「地図だ。親爺が一度、こんな地図を見せてくれた。円の中にはお前の世界や俺の世界がある… 他にもいっぱいな。幾つあるか誰も知らん。暗黒の塔は、その中央に立っている。時の初めからずっとだ。そして、強いエネルギーを送って外界から宇宙を守ってくれている」。「『外界』って? 宇宙の外には何があるの?」。「外界には終わりなき暗黒が拡がり、俺たちを餌食にする悪魔どもで満ちている。ウォルターは塔を破壊して、化け物を入れる気だ」。「だけど、あなたが止めるんでしょ? 塔が壊されるのを? 夢で、奴らが壊そうとするのを見たんだ。もし、僕らが…」。「『僕ら』なんて ないんだ、ジェイク。俺にとって大事なのは、ウォルターを見つけて殺すことだけだ」(2枚目の写真)。ジェイクは、ローランドの言葉に失望する。「ドーガン」では、子供たちがまた機械につながれ、光の束が暗黒の塔を襲う。「ドーガン」は、今2人がいる中間世界にあるため、その光がくっきりと見える(3枚目の写真、ジェイクは左にいる)。「ビーム震だ。強力だな」。「僕の世界で起きてた地震みたいだ」。「1つの世界で起きることは、他の世界にも反響するからな」。
  
  
  

焚き火の横で寝ていると、「ジェイク」と呼ぶ声が聞こえる。目を覚ましたジェイクは、声のする方に歩いて行く。「やあ坊主。どこにいる?」。それは、1年前に亡くした父の声だった。森の中に人影が見える。ウォルターの悪夢で起こされたローランドは、ジェイクがいないので行方を捜し始める。ジェイクの前には父が立っていた。「やあ、坊主」。「パパ?」。「久し振りだな。会えて嬉しいよ。背も伸びた」。「本物じゃない。あんたは…」。「死人か? そうじゃない」。「寂しかったよ」。「私もだ。おいで。さあ、家に帰ろう」。そう言うと「父」は手を伸ばす。ジェイクが触れた途端に赤い光がほとばしる(1枚目の写真)。そして、「父」が「暗黒と炎」と口走ると、赤い光は膜のように一面に拡がる。後ろから、ローランドが「ジェイク、そこから離れろ!」と叫ぶ。赤い膜の中から化け物が姿を現す。ローランドが銃を連射すると赤い膜は消え、今度はローランドの父が姿を現す。そんなことで騙されないローランドはすぐに父を撃ち、再び赤い膜に戻るが、連射で敵が死ぬと膜も消える。ジェイクが「パパがいた」と言うと、ローランドは「お前の弱みを見つけ、幻覚で騙そうとしたんだ」と説明する。しかし、いたのは1匹だけではなかった。ローランドはいきなり化け物に襲われ、鋭い触手が左肩を貫き(2枚目の写真、矢印)、そのまま背後の木の幹に「釘付け」になる。怪獣はローランドから離れると、今度はジェイクを追い始める。倒木の上を逃げるジェイク(3枚目の写真、矢印は、追う怪物)。危うく殺されそうになるが、傷を押して銃を連射したローランドに救われる。
  
  
  

ジェイクのアパート。母と義父が帰宅すると、キッチンで料理をしている男がいる。不法侵入だ。男は、ウォルター。夫妻を見ると、「勝手にやってる。気にせんで欲しい。私が来た所には、キッチンなどないんでね」と笑顔で言う。義父:「貴様何者だ?」。「知ってるんじゃないかな、ロン? 私を呼んだのは、君だ。電話じゃない。ガキを追い出してそこにいるママさんを独占しようとする君の願望だ。だが、いつまで経っても二番手のままだ」。「今すぐ出てけ!」。その時、母が恐ろしそうに警告する。「ジェイクが描いてた男よ」。その言葉に強く反応したのは、義父ではなく、ウォルターだった。「絵だと?」。義父に興味のなくなったウォルターは、「呼吸を止めろ」と命じ、ロンは瞬時に死ぬ。悲鳴を上げる母に、「静まれ」と言い、「絵だ」と命じる。そして、一緒にジェイクの部屋に行くと、母の肩をつかみ、「見せろ」と命じる。すると、母が記憶していたジェイクの行動を、何人もの「ジェイクの幻影」が現れて再現する。幻影は部屋中を動き回り、絵を描き、それを壁に貼って行く(1枚目の写真、絵を貼っているのは、「ジェイクの幻影」)。そのうち、「ジェイクの幻影」はローランドの絵を描き始める。それを見たウォルターは、ジェイクがローランドと一緒にいると確信する。用済みになった「ジェイクの幻影」は消え、ウォルターは、母に向かって、「君の息子は、特別な才能を持っている。なのに信じようとしなかった。罪悪感を噛みしめるんだな。さらに、その子を精神病院に送り込もうとした。恥を知れ」(2枚目の写真)。ここで映像は途切れる。
  
  

ローランドとジェイクが向かっていたマニ教徒の村が見えてくる(1枚目の写真、矢印)。人々の住んでいる集落は、崖の左側に点在する白い平屋の建物。崖に造られた巨大な構造物は、「中間世界」で行われた戦争の結果、半ば廃墟と化している(内部には、稼動可能なポータルもある)。2人が村に入って行くと、「よそ者が来たぞ!」と警戒する声が上がり、住民が集まって来る。部族長が、「長き昼と快適な夜を」と出迎え、ローランドが、「あなたに その倍あらんことを」と応じる。ローランドは、単刀直入に、「最強の『読み手』は?」と訊く(2枚目の写真)。1人の女性が進み出る。「私です。私はオーラ」〔字幕では「アラ」だが、「オーラ」と言っている〕。ローランドは、「そこの少年が、描いたものだ。場所を知りたい」と要求する。「黒衣の男ですね」。ここで、ローランドの傷に関するシーンが挿入される。「傷は悪化しています。お助けする手段がありません」〔ローランドの負傷は重要なポイント〕。その後、オーラとの会話が始まる。オーラは、ローランドに「これほど強いシャインを見たのは初めてです」と話す。ジェイクは、何のことか分からないので、「シャインって?」と尋ねる。「サイキック・パワーよ。この能力を授かる人は滅多にいない。でも、たいていはパワーが低いので、本人すら気付かない」。ここで、オーラは念話に切り替える。「あなたのシャインはすごく明るいの、ジェイク。想像を超えるポテンシャルの高さだわ」。ジェイクは言われた内容よりも、頭の中で声が聞こえたことにびっくりする(3枚目の写真)。「すごいや」。不審な顔をしているローランドに、「彼女の声が、頭の中で聞こえた」と説明する。ローランドは、絵の場所を見つけ出すようオーラに指示する。「集中して。あなたのヴィジョンを共有しましょ」。さらに念話で「心を開き、私に見せて」と伝える。そして場所が分かる。ローランドが「教えろ」と声をかけ、2人が振り向く(4枚目の写真)。「奴はどこだ?」。「ウェイストランドの北。ここから6ヶ月以上かかります」。「なぜポータルを使わん?」。「黒衣の男たちは、すべてのポータルを監視しています」。さらに、「あの場所に行くには、彼らの基地のポータルを使うしかありません」とも。「じゃあ、歩くしかないな」。ここで、ジェイクが、「待って」と言い出す。「偽の皮膚の奴らは、別の世界から子供をさらって来たんだよね? 僕も、ニューヨークから連れ去られようとした。それって…」。ここで、ローランドもピンとくる。「地球に奴らの基地がある。俺を地球に送ってくれ」。
  
  
  
  

大きなテントの中で、歓迎の宴が催されている。ポータルの準備は直に完了すると伝えられる。ローランドは、地球には武器はあるのか弾丸は手に入るのかと心配するが、行き先が「銃大好き人間の国」なのでその心配は全くない。別の村人が、ポータルを勝手に動かすと災難が降りかかると反対意見を述べる。族長は、「ガンスリンガーには背けない。それが掟だ」と諌める。別な女性が、「なぜ、彼がそうだと分かるんです?」と訊く。族長はオーラに発言させる。「彼は、ギリアドのローランドです。エルドの家系の最後の一人です」〔ギリアドは「内世界」のニューカナンの首都/エルドは、「全世界」の王であったアーサー・エルドのこと。イギリスのアーサー王伝説に準じている。だから、アーサー王の剣エクスカリバーも登場する/これに関して、原作者であるスティーヴン・キングが映画について訊かれた際、「ローランドが白人だとは一度も言っていない」と述べた背景には、ファンサイトで白人として描かれている(http://darktower.wikia.com/wiki/Arthur_Eld)ことを意識しているからかも〕。オーラは、さらに続ける。「でも、黒衣の男は、彼の心を操り、復讐の虜にしてしまいました。彼は、もはや、ガンスリンガーではありません」。それを聞いた、「最初に反対意見を述べた男」は、「あんたは、先祖に恥じるべきだ。ガンスリンガーは、塔を守ると誓約したはずじゃ…」と非難を始める。ローランドは、それを遮り、「周りを見てみろ。戦いは終わり、すべてを失った。お前は、こそこそ隠れていないで、自分の目で確かめるがいい。暗黒はすべてにはびこり、抵抗は空しい。俺は、お前たちの多くが生まれる前から、塔を守るため戦ってきた。戦いに次ぐ戦いだ。もう十分だ」と述べる(1枚目の写真)。そして、「暗黒が支配する以上、塔はいずれ破壊される。その前に、俺は復讐を果たす」と言って席を立つ。残ったジェイクは、ローランドを擁護する。「彼は命を救ってくれた… 僕のことが大して好きでもないのに。彼は、まだガンスリンガーだ。そう確信してる」(2枚目の写真)。次のシーンでは、ポータルの前に族長、ジェイク、オーラの3人が立っている(ローランドは傷が悪化し、近くに座っている)。族長:「直に、君の地球とやらの街にある『妨害されない』場所に、接続できるはずだ」。ジェイク:「『はず』って?」。「非常に古い機械だからな」「この番号を覚えておくがいい。ここに戻るのに必要だ」(3枚目の写真、矢印)〔「14-08」は、スティーヴン・キングの短編ホラー小説『一四〇八号室』の同じ〕
  
  
  
 
マニ教徒の村は、そこにローランドがいることを「水晶球」の魔力によって知ったウォルターによって、襲撃される。襲ってきたのは、10人ほどの「タヒーン」〔頭部が鳥や獣の人間〕。偽の皮膚などは被っていない。建物には火が放たれ、村人が殺されていく。ジェイクは、ローランドに隠れているよう命じられるが、少女が殺されそうになったので、救おうと必死になる(1枚目の写真)。その時、「水晶球」を見ていたウォルターが、村にジェイクのいることに気付く。たちどころに、「あの少年だ、捉えろ」との命令が下る。ジェイクは「タヒーン」に捕まり、村の外へと連れて行かれる。それを察知したローランドは、悪化した傷でフラフラになりながら立ち上がると、心を澄まし、ジェイクに想いを集中し、銃を水平に構えて撃つ(2枚目の写真、矢印は銃口、右の光は起爆薬の発火)。アーサー・エルド自身の剣の刃金を使って作られたローランドの拳銃の弾は、途中に邪魔するものを貫通し、遠くを走る「タヒーン」に命中する。印象的な場面だ。解放されたジェイクは村に戻ってローランドに抱き付く(3枚目の写真)。
  
  
  

戦闘が続く中、ジェイクとローランドはポータルに向かって突進する(1枚目の写真)。2人が出た先は、ニューヨークにあるレストランの厨房の中(2枚目の写真)。包丁を持った人間を見て、ローランドが「ナイフだ」と警戒するが、ジェイクは、「料理人だよ。行くよ」と外に連れ出す。厨房の中は、ポータルの出口ができた時の爆発力で、食材が飛び散っている。
  
  

「ドーガン」では、ポータルが開き、2人が逃走したことがウォルターに伝えられる。ニューヨークでは、ジェイクは、ローランドの銃を青いゴミ袋に入れている。「銃をつけたまま、病院には入れないんだ」(1枚目の写真)「信じてよ。さあ、行こう」「話すのは僕に任せて」。ローランドは応急処置を受けて病室で休んでいる。その間にジェイクは母に電話をかけるが、留守録になっていて通じない。そのうちに、担当の女医がインターンを引き連れて回診に来る。「デシャンさん。抗生物質が効いてきたようですね。痛みの程度は、1から10のどのくらいですか?」。ローランドには意味が分からない。「あなたはひどい状態でした。そうやって真っ直ぐ座っていられるだけで驚きです」。「俺は、とっても頑丈なんだ」。医者は病状を説明する。「仮装パーティで負った傷による感染症を別にして」(2・3枚目の写真)〔仮装パーティは、ジェイクが思いついた口実〕「A型、B型、E型肝炎の痕跡がありますし、慢性の放射線障害ですね。過去数ヶ月に海外に旅行したことは?」。ジェイクは首を横に振り、「No」と答えるよう指示。ローランドは、「いいや、ずっと地球にいる」。「いいや」は良かったが、後半は不信感を抱かせる。「で、俺は治るのか?」。「経過観察のため今夜は泊まってもらいます。多分、明日の午後には…」。問題なしと解釈したローランドは、手に刺さった点滴針などを全部外し、「ここには いられない」と言い、「お礼に」と「中間世界」のコインを渡し、「長き昼が続かんことを」と言うと、医者が止めるのを無視し、病室を出て行く。
  
  
  

その後、2人はバスに乗ってジェイクのアパートに向かう。バスの中で面白かったのは2つ。1つは、ジェイクが、薬をまとめて渡し、「痛み止めとビタミン剤、1日に1個か2個、必要に応…」と言ったところで、ローランドが全部まとめて飲み込んでしまうシーン。もう1つは、ジェイクの渡したコーラが気に入り、「これ何だ?」と訊くと、ジェイクが「砂糖」と言うシーン。甘い物など飲んだことがないのかも。その後でジェイクは質問する。「どうやってポータルを見つけるの? ニューヨークは大きな街だよ」。「さあな。俺は、ウォルターに計画を知られなきゃいいんだ」。ジェイクは困るが(1枚目の写真)、いいことを思いつく。「いい案がある」。ここで2人はバスを降りる。「痛み止めはすごく良く効くな。こんなに気分がいいのは、数年ぶりだ」。「ここには、いいものが揃ってるからね」。「もっと砂糖はないか?」。ここで、一時、マニ教徒の村に移行。オーラの前にウォルターが現れる。そして、「奴は、子供をどこに連れて行った?」と訊く。オーラの力も、ウォルターには全く役に立たず、思わず、「ち…」と言ってしまう。「地球だな。ありがとう」(2枚目の写真)。オーラは死に、ウォルターは行き先を知ってしまう。さて、ジェイクの「案」は、先日会った浮浪者から訊き出すこと。浮浪者を見つけると、「僕を覚えてる?」と近づく。「『連れてかれるぞ』って言ったよね、あんたも連れてかれたんだろ?」。浮浪者は、「俺は失った… シャインを」と答える。「どうやって連れて行かれたの? 覚えてない? ポータルだよ」。浮浪者は、動転して全く応えられない。そこで、ジェイクは、オーラのように念話で話しかける。「聞こえる? 覚えていること、見せて」。浮浪者の記憶から、基地の場所が分かる(3枚目の写真)。その時、ローランドがストップさせる。「奴らに、シャインが感知されるぞ」。
  
  
  

ジェイクは、そのままアパートに向かう。入口で会ったティミーに訊くと、昨日から両親を見てないと告げられる。心配して部屋に駆け込んだジェイクの目に一番に飛び込んだのは義父の死体。ジェイクは最悪の事態を予想する。「ママ!」と叫びながら自分の部屋に行くと、床は人型に焼け焦げている。ジェイクは、「そんな、そんな、ダメ、ダメ…」と床にへたり込む。ローランドが冷静な目で見ると、壁にはスマイリーフェイスの上に、「Hello There(こんにちは)」と書いてある〔スマイリーフェイスと、『ミスターメルセデス』の関連も指摘されているが、あまりに一般的過ぎる〕。そのスマイリーフェイスを見たジェイクは、母とウォルターの最後の会話が見えてくる(1枚目の写真)。ローランドは、危険だと察知し、「やめろ、ジェイク、見るんじゃない。それこそ奴の狙いだ。奴に感知される」と宥めるように話しかける。ジェイクは、「ママが死んじゃった」と泣きながら、ローランドの言葉に従って、必死に心を閉ざそうとする(2枚目の写真)。ローランドはジェイクを抱き上げ、アパートから出て行く。2人の間に強い絆が生まれたのは、この時からだろう。2人とも、ウォルターに肉親を殺された。ローランドはジェイクを港に連れて行く。そして、ジェイクの肩に手を置くと、「俺が奴を殺す。俺たちのために」と言う。ジェイクは、「塔はどうなるの?」と訊く。ローランドは思わず下を向く。「ママが死んだから、復讐できるの? あんたの世界は滅びたかもしれけど、僕のはまだ滅びてない。『暗黒が支配する以上、塔はいずれ破壊される』って言ったよね。みんなは正しかった。あんたはガンスリンガーじゃない」(3枚目の写真、頬には涙の跡が幾筋も残っている)。そして、一人で勝手に復讐に行けとばかりに、先ほど浮浪者の心の中で見た場所をローランドに教える。
  
  
  

ガンスリンガーでありながら、塔を守ることを放棄し、父の復讐のみを目指していたローランドは、母を殺されながら塔の心配をするジェイクの態度に自らの愚かさを悟る。そして、ジェイクを近くにある古い倉庫に連れて行く。「若い頃、俺はガンスリンガーの信条を暗唱した。心と気を鎮めてくれる。ここ何年も唱えていない」と言うと〔ジェイクが、夢の中でローランド親子が「信条」を唱えるのを見たシーンは、何年も前の出来事ということになるが…〕、拳銃をジェイクに渡す(1枚目の写真)〔拳銃は2挺持っている〕。2人は、並んで銃を構え、標的に狙いを定める。ローランドが、「我は手で狙い定めぬ。手で狙う者、父親の顔を忘却せり。我は目で狙い定める」と唱え、銃を撃って的を倒す。ローランドはさらに、「我は手で狙い定めぬ」と言い、そこからは、ジェイクも一緒に唱え始める。「手で狙う者、父親の顔を忘却せり。我は気で撃つ」〔途中、抜けている〕。ジェイクは標的を外す。「我は銃で殺さぬ。銃で殺す者、父親の顔を忘却せり」(2枚目の写真)。ここで、ジェイクの夢の中で、ローランドの父が息子に言葉をかけたシーンが挿入される。「まだ塔はあるし、お前もいる」。そして、ローランドとジェイクが唱和する。「我は心で殺す」(3枚目の写真)。そして射撃。2人とも標的に当てる。「よくできた。お前の武器はシャインだ。俺のは銃だ」。
  
  
  

2人は銃砲店に行く。ローランドは店員に拳銃を向け、「45口径弾だ」と要求する(1枚目の写真)。「ここには、あまり…」。「全部出せ」。ジェイクが、「言われた通りにしてよ。傷つけないから」と安心させる。店員はすべてを渡す。ジェイクが店の外に出て、ローランドが後に続こうとすると、後ろから、「ガンスリンガー」とウォルターが呼ぶ。ローランドが振り向くと、ウォルターが「寂しかったか?」と訊き、すぐさまローランドが撃つが(2枚目の写真)、弾は、実体を伴わないウォルターを通り抜ける。そして、ジェイクが店に戻ろうとすると、店のシャッターが自動的に下り、入れなくなる。「罠にはまったな」。ようやく気付いたローランドは、ジェイクに「逃げろ」と指示する。ウォルターにとってローランドなど どうでもいい。これは、ジェイクを捉えるために2人を切り離すトリックだった。外に出たジェイクの周りには、偽の皮膚を被った連中が方々にいる。ローランドがウォルターと戦っている間にジェイクは追い詰められ、交差点で急停車したバンに拉致される。バンの中で、ジェイクは、念話で「ローランド」とSOSを発信する(3枚目の写真)。この叫びは、ローランドに届き、その瞬間、ウォルターの姿も消える。ローランドは店の外に出るが、ジェイクの姿はもうどこにもない。
  
  
  

一方、ニューヨークにある基地では、連れて来られたジェイクがウォルターに引き合わされる。ウォルターは、シャインの測定器でジェイクを調べ、「前評判通り、満杯だな」と満足する。そして、すぐにポータルへと向かう。一方、ローランドは、先にジェイクから基地の場所を聞いていたので、周囲の護衛を次々と殺し、建物の内部へと侵入する。ジェイクはポータルの前に連れて来られる。基地のポータルから「ドーガン」に向かう番号は「60-11」〔重要な割に、スティーヴン・キングとの関連は見つからなかった〕。ポータルが輝き始め(1枚目の写真)、ジェイクはもう一度、念話で「ローランド」とSOSを発信する(2枚目の写真)。「僕、連れてかれちゃう」。そして、「60-11」の部分のイメージをローランドに送り、「気をつけて」と付け加える。ローランドは、「待ってろ、今行くからな」と呟くと〔念話ではないので、ジェイクに聞こえたとは思えない〕、その後に、派手なアクション・シーンが始まる。その騒ぎはポータルにまで届く。セイヤーは「後はお任せを」と言い、ウォルターは「バラバラにしてやれ」と言ってポータルに向かう。
  
  

ウォルターは、ジェイクの手をしっかり握ったまま、ポータルをくぐり「ドーガン」に入る(1枚目の写真)。正面に見えるのは、「暗黒の塔」を破壊するための装置。ジェイクは、シャインを吸収するイスに固定される(2枚目の写真)。機械のスイッチが入り、シャインの吸収が始まる。一方、ニューヨークの基地では、ローランドが大勢の敵を相手に戦っている(3枚目の写真)。アクション・シーンとしては、この映画で一番の見どころであろう。ローランドはセイヤーを除く全員〔恐らく100名以上はいた〕を殺す。
  
  
  

その頃、「ドーガン」では、異変が起きていた。出力が一定値に留まり、上がらなくなったのだ。これでは塔の破壊はおぼつかない。理由は、ジェイクが渾身の力でシャインの流失を抑えているため。他の少年少女と違い、ジェイクはシャインのコントロールもできるようになっていた。恐らく、オーラとローランドによって「念話」と「信条」を教わった結果であろう。ウォルターはジェイクの前に行くと、「なぜ抵抗する? そんなことをしても、奴からは何の見返りもないぞ」(1枚目の写真)「奴はお前を好きじゃないし、お前のことなど どうでもいいんだ。奴は、俺に復讐するため、お前を利用しただけだ。だからお前はここにいる。それがお前の運命だ」と話しかける。ジェイクは、「お前は、僕のママを殺した!」と怒鳴る。しかし、これはウォルターの策略で、ジェイクの気を逸らして抵抗力を弱めることが目的だった。お陰で、ジェイクから溢れ出したシャインは光束となって塔を直撃し、ニューヨークは大きな地震に見舞われる。これは、皮肉なことに、ローランドとセイヤーの最終決戦を、ローランドの勝利へと導く。ローランドはすぐにポータル室に行き、ジェイクが伝えたコードを打ち込み、接続が始まる。「ドーガン」側では、ポータルの接続を遮断しようとするが、ジェイクがシャインの力でそれを阻止する。操作員がウォルターに叫ぶ。「その子です! ポータルの接続を切ろうとさせません!」(2枚目の写真)。それを聞いたウォルターは、ジェイクに「大したもんだ」と言うと、ポータルに走って行き、ローランドを「ドーガン」に来させまいと、ニューヨークへと戻る(3枚目の写真)。
  
  
  

ローランドは2挺拳銃を連射してウォルターを殺そうとするが、ウォルターは落ちている多くのコンクリート破片を宙に浮かせ、飛んで来る弾丸を残らず阻止し、逆に破片をローランドに向けて放つ。ローガンは次に天井向けて弾丸を連射し、ガラス破片の雨をウォルターに見舞うが、逆にガラス破片の「弾丸」を浴びせられる。連射で阻止しようとするが(1枚目に写真)、1つが右手の甲に突き刺さる。ローランドは、歯で破片を引き抜くと、鉄骨への銃弾の跳ね返りを利用して、ウォルターを殺そうとする。しかし、弾丸はすべてウォルターに空中で取られてしまう。逆に、その弾丸を高速で投げられ、拳銃を落としてしまう。そこにウォルターに投げた鉄骨がぶつかり、柱に叩きつけられた上、頭から天井のコンクリート片を大量に落とされ、完全にダウンする。その様子を、ポータルを通じて見たジェイクは、念話で、「ローランド、起きて」と話しかける。返事がないと分かると、今度は、「信条」と唱え始める。「我は手で狙い定めぬ。手で狙う者、父親の顔を忘却せり。我は目で狙い定める」(2枚目の写真)。ローランドの目が開く(3枚目の写真)。
  
  
  

我は手で撃たぬ。手で撃つ者…」。ここで、ローランドが唱和する。「父親の顔を忘却せり。我は気で撃つ。我は銃で殺さぬ。銃で殺す者、父親の顔を忘却せり」。ローランドは、地面に倒れたまま銃を手にすると、「我は心で殺す」と言い、銃を1発放つ。弾は真っ直ぐウォルターの胸に向かう。ローランドは、もう1発を鉄骨に跳ね返らせるように撃つ。2つの弾は、ウォルターが構えた手の直前で衝突し(1枚目の写真、矢印)、真っ直ぐ飛んできた弾は、跳ね返った弾によって方向が変わり、ウォルターの胸に食い込む。45口径弾の直撃に合って、ウォルターは身動きできなくなる。立ち上がったローランドはウォルターに2発食らわせ、3発目の額の真ん中に当たった弾で、ポータルの反対側に吹き飛ばされる。ローガンはさらに、ポータルごしに銃を撃ち、ジェイクの手枷を銃弾で破壊する。装置から解放されたジェイクは、ポータルを通ってニューヨーク側に逃げ込む(2枚目の写真)。最後に、ローランドは、シャインの吸収装置の中央目がけて1発撃ち、その後は連鎖反応が起きて「ドーガン」そのものが爆発・崩壊する(3枚目の写真)。これで、暗黒の塔を破壊する試みは阻止することができた。
  
  
  

ニューヨークの街角で、ジェイクが「ほら」とホットドッグをローランドに渡している。「何だ、これ?」。「ホットドッグ」(1枚目の写真)。「野蛮だな。犬種は?」〔よくあるオチ〕。「犬じゃないよ」。ローランドは、「俺は、ここを出て行く。分かってくれるな?」と尋ねる。「分かってる」。ワンテンポ置いて、「一緒に来ないか〔Why don't you come with me〕?」と誘う。「いいの〔Really〕?」。「ここに用はないだろ〔You have nothing here〕? お前の助けも借りたいし」。「うん、行くよ、絶対」(2枚目の写真)。ジェイクのこんな嬉しそうな顔は、初めてだ。ローランドはさらに、ジェイクを「ガンスリンガー」と呼ぶ。かくして、2人のガンスリンガーは、ニューヨークの別のポータルに入って行く(3枚目の写真、矢印は、隣の店のシャッターに描かれた、暗黒の塔の象徴「赤いバラ」)〔しかし、ここにポータルがあると、どうやって知ったのだろう?〕
  
  
  

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